「ピタジュマジック」カウントダウン企画“ピタジュが出来るまで”

ピタジュ結成秘話“ピタジュが出来るまで”

※このストーリーはピーターパンJr.の結成までに迫る連載企画です。2017年の現在進行形の話ではありません。登場する人物、ストーリーは全て過去のエピソードです。ピーターパンJr.のリーダーTAKUROを主人公としてお話を進めて参ります。

 

☆第九話「LoveStory」

大切な路上ライブの予定を変更して迎えたミーティングの日、僕とDANは入念に話し合いをした上で今の自分たちに一番最適なライブハウスを探した。

何せ僕たちは東京で活動をし始めたばかり、ファンの方も居なければ協力してくれる友達も居ないのである。

チャレンジは必要でも無謀な賭けでは潰れてしまう。

僕たちの目的は最後の勝負では無く、これからTOMOYAを含めた三人で東京で音楽活動をしていくこと。今後のことを真剣に考え、時間は掛かったがようやくひとつのライブハウスに辿り着いた。

イベント内容や趣旨、タイトルなどが徐々に固まり、最後に一番重要な“開催日”が決定した。

2014年の12月を“約束の日”とした僕達は“引き返せない恐怖”を少しだけ感じながらライブハウスにチケット送付の連絡をした。

いよいよ準備は整った。

後は行動あるのみだ。路上ライブをしまくってチケットを届けよう。一生懸命歌えばきっと思いは届くはず。

その日から始まった路上ライブDAYS。多い時には週に四回以上は路上ライブをしていただろうか。生活が出来るだけの最低限の仕事をする以外は、ほとんど路上ライブをしていたような気がする。

徐々に路上ライブに足を止めてくれる人たちが増えていく中で、僕たちはいつからか当たり前のように二人で歌を奏でるようになっていた。

「一人で歌うより反応が良い。」「二人で歌う方が緊張しない。」

深い理由は特になく。ただ単にそんな感じだった。

少しずつ路上ライブの“コツ”を掴み始めた僕たちはそこから沢山のCDをお届けすることになる。

そしてついに、その瞬間は訪れたのだ。

「ライブのチケットって購入出来ますか?」

待ちわびたその台詞に思わず声を上げる僕たち。

舞い上がった僕たちはライブへの意気込みやこれまでの話など、本当に沢山のことをその人に解説した。

とんでもなく長い話だったにも関わらず、優しい笑顔で聞いてくれたその人は

「当日のお二人のハーモニーをとても楽しみにしています。」

と軽く会釈をし、その場から去っていった。

「…。」

何の間違いも無いはずのこの言葉が、その時の僕たちにはとても重く突き刺さった。

そう。僕たちの企画したライブに“二人でパフォーマンスをする”という演目は一切組み込まれていなかったのである。

僕たちはソロシンガーのTAKUROとKLEARのDANであって、二人組みのユニットではありません。このライブは二組の合同ライブイベントです。

しっかりそう伝えたつもりでいた。

その事実を分かった上でチケットも受け取って頂いたはずだが、僕たちが路上ライブだけで披露する“二人の歌声”に共感してくれたその人は、当然のことながら“当日は二人でパフォーマンスをする演目もあるのだろう”と思ってしまっていたのだ。

この時僕たちは、自分たちの浅はかな行動に初めて気付かされた。

“出演しない架空のユニットのライブチケットを販売する”これではテレビの通販番組で実物とは全く違う商品をお勧めして騙しているのと同じではないか。

目先の結果を出すために始めた二人でのパフォーマンスがこんな事になるなんて。僕たちは一体なんてことをしてしまったんだろう…。

先ほどまでの天にも昇るような気分は一気に消え去り、罪悪感と自己嫌悪だけが僕たちの心を満たした。

謝ってチケット代を返そうとも思ったが、その人はすでに駅の方へと姿を消してしまった。次に会えるとしたらライブの日だ。

「やるしかないな…」

どちらからともなくそう呟いた僕たちはTOMOYAに事情を説明し、急遽イベント内容に“二人でのパフォーマンス”を追加することにした。

この日から僕たちは“自分たちのCDやチケットを受け取って頂くことに対しての責任”を強く意識するようになった。

これまでの方は全て、僕たちが話す言葉。歌を通して届ける思い。を信じてくれたからこそ“CDやチケットを受け取る”という行動で気持ちに応えてくれたのだ。

信じてくれた方を裏切るわけにはいかない。

今思えば“ただの音楽好き”だった僕たちが“アーティスト”に成長したのはこの時からだったかもしれない。

路上ライブをはじめた当初、

「KLEARとTAKUROでクリタ君やな、俺ら三人はクリタ君や。クリタ君頑張っていこうぜ。」

TOMOYAが笑いながら命名したそのおかしなグループ名“クリタ君”と名乗ることを決めた僕たちは、これまで以上に路上ライブを全力で取り組んだ。

すると、今までの“説明の必要だった路上ライブ限定のわけありユニット”の時とは違い。自分たちでも驚くほど、素直に歌を楽しむことが出来た。

次第に僕たちの歌声に共感してくれる方たちが増え。路上ライブをすれば必ず来てくれるというファンの方にも出会えた。

丁度そんな頃、沢山のカバー曲をお届けしていくうちに僕たちの中で“ある変化”が起きたのだ。

それは…

“自分たちの思いを曲として届けたい”

という変化である。

カバー曲を歌うということは“誰かの思いを代弁する”ということだ。

自分たちの歌声を通して誰かの思いが届く。それも勿論素晴らしいことには違いないし、誰かの書いた思いに共感して自分の気持ちとして届ける。ということもあるだろう。

しかしその時の僕たちは沢山の方に歌声を聴いてもらう中で、いつしか“クリタ君としての思い”というモノが芽生え始めていたのだ。

「二人のオリジナル曲を作らないか?」

言い出したのは僕の方からだった。

“約束の日”が近づくなか、チケットのお届けが伸び悩んでいた僕たち。現状を突破する為にも自分たちの気持ちをたっぷり込めたオリジナル曲の存在が必要不可欠だと思ったからだ。

相方であるTOMOYAのこともある。DANが悩むのは当然だろう。しかしオリジナル曲を作るのは僕の為でもDANの為でも無い。

“KLEARとTAKUROでクリタ君”

そう、TOMOYAも含めた三人の未来の為なのだ。

いつになく熱く語る僕に心を決め、楽曲の制作を許してくれたKLEARの二人。こうしてクリタ君の初オリジナル曲の制作はスタートした。

楽曲のベースとなったのは僕が自分の為に作っていたナンバーで、雰囲気や方向性は決まっていたが、肝心のメッセージが決まらず眠っていた楽曲だ。

“今なら完成するかも知れない。もう一度、この曲を一から作り直そう。”

DANと二人、当時僕の暮らしていたアパートの一室で何度も何度も楽曲を練り直した。

聴いてくれる方の心にすっと溶け込むような、日常に寄り添って笑顔が零れるような。

あーでもない、こーでもないを繰り返し、ようやく今の僕たちの気持ちにぴったりの一曲が出来上がった。

「LoveStory」

と名付けられたその楽曲には

“全ての人生はLoveStoryである”

という思いが込められた。

週に何度も路上ライブを通して沢山の人と話をしていた僕たち。

その全ての人たちにはそれぞれの暮らしがあって、人生がある。

良い事もあれば嫌な事もあるかも知れないが、忘れてはならないのはどんな人間も生まれてこれたからこそ今を生きることが出来ている。ということだ。

その感謝を思い出せた時、身近にある愛を見つけられるハズ。

そうすれば今、自分がどんなLoveStoryの中にいるのかを実感出来るだろう。

日常で見落としてしまいがちになっている“大切なこと”を僕たちの歌で気付いてもらえたら。

そんな願いを乗せて「LoveStory」は誕生した。

小さなアパートの一室で産声を上げたこの歌は、これからの僕たちの“道しるべ”となるだろう。

深夜遅くまでレコーディング(録音)作業をし、完成したデモテープを仕事の空き時間や移動中、ありとあらゆる場面でとにかく聴き込んだ。

そして迎えた“LoveStory”初披露の瞬間。

そこには“予感を確信に変える出来事”が僕たちを待っていた。

to be continued…