「ピタジュマジック」カウントダウン企画“ピタジュが出来るまで”

ピタジュ結成秘話“ピタジュが出来るまで”

※このストーリーはピーターパンJr.の結成までに迫る連載企画です。2017年の現在進行形の話ではありません。登場する人物、ストーリーは全て過去のエピソードです。ピーターパンJr.のリーダーTAKUROを主人公としてお話を進めて参ります。

 

☆第七話「重ねた声」

人間とは本当に単純な生き物である。

悪いことがあればネガティブになり、良いことがあればポジティブになる。Keisukeとグループを組むということが決まった時から一気に頭が働いてアイデアが浮かび始めた僕もまたその一人だ。

神戸から戻ったDANと二人、音楽活動を再開した僕達は本当に少しずつではあるが現状を変えられる予感がしていた。

以前の僕達がしていなかったことをしよう。という僕の提案に賛成してくれたDANと東京近郊の路上ライブが出来そうなスポットをしらみつぶしに当たった。上京して間もない僕達は土地勘が無かったので、まずは足で情報収集をしようと決めたのだ。

吉祥寺に池袋、渋谷に原宿。川越や川崎、横浜まで本当に様々な場所に足を運んだ。

これが良かったのである。

路上ライブのメッカと呼ばれていたJR新宿駅東南口は確かに大きな道があり路上ライブをするにはもってこいの場所ではあるが、それゆえに沢山のパフォーマーが毎日何組もパフォーマンスをしている。これではただの騒音だ。この光景を見た人が一組のアーティストの音楽に耳を向けてくれる確立は低いだろう。それどころか、他の路上ライブスポットと比べると、通行量は多いものの、皆急ぎ足に見える。そう、新宿という街は忙しい人たちの多い街だったのだ。

路上ライブで人が止まらないのは自分達のせいだけでは無いのかも知れない。

沢山のスポットを巡ることで少しずつそんな気がして来た僕達は、初めて路上ライブの場所を変えることにした。

真面目な性格が災いして、この場所で止められないならどこに行っても同じだ。まずは新宿で人を止めなければ。

そう思っていた僕を変えたのは紛れも無くあの一言がきっかけだった。

「TAKUROと俺がグループを組んだら面白いかもな。」

というKeisukeからの一言が。

Keisukeが上京してきたらすぐに本格的に活動が出来るように。そう考えていた僕に自分の“こだわり”を押し通している時間は無かったのである。

路上ライブの場所を新宿から池袋に移した僕達はここで“初めての経験”をすることになる。

サンシャイン通り、沢山の電気店、大きな十字路。いつもとは違う街の表情に少し緊張しながらも、池袋路上ライブは幕を開けた。

新宿に比べて大きな歩道の少ない池袋は路上ライブスポットを決めるのも一苦労だった。ようやく見つけた場所も「本当にここで歌っても良いのか?」と躊躇するほどの狭いスペースだった。

「やってみて駄目なら場所を変えれば良い。とりあえずやってみよう。」

DANの言葉に勇気を貰いながら僕は渋々機材のスイッチを入れた。この五分後、何が起こるかなど知りもせず。

いつもの曲をいつものように歌った。周りの喧騒に気を取られないよう、譜面台に立てた歌詞を見ながら歌に集中した。

そして僕の十八番である尾崎豊さんの「I LOVE YOU」を歌ったあと、譜面台から目線を上げると。そこには沢山の人たちの顔が並んでいた。

信号待ちをしているのでは無い。携帯で僕を撮影している人。カップルで並んで次の曲を待っている人。一人でイヤホンを外してこちらを見ている人。

そう、僕の歌を沢山の“知らない人たち”が聴いてくれていたのだ。

初めての経験に戸惑い頭が真っ白になった僕は、ただ何も出来ずそこに立ちすくんでいた。

「次の曲、歌わないのかな?」「何?これで終わり?」

どこからかそんな言葉が聞こえてくる。

早く次の曲を歌わないと。頭では分かっているのだが極度の緊張と混乱で僕はパニックに近い状態になってしまっていた。

ただただ時間だけが過ぎる。ほんの数十秒だったかも知れないが、その時の僕には10分にも20分にも感じられた。

固まったままの僕に立ち去り始める人たち、

“もうダメだ…”

そう思ったその時。

「次の曲は、二人でTEEさんのベイビーアイラブユーをカバーします!!聴いて下さい!!」

力強く自信に満ちた声でそう叫んだのは僕の次に歌うハズだったDANだった。

二人で…?ベイビーアイラブユー…?

次から次に起こる前代未聞の展開に全く付いていけない僕に

「たくちゃんがサビ歌って!」

DANはそれだけ伝えてくれた。

その後のことはうっすらとしか記憶にないが、聴いたことのあったベイビーアイラブユーのサビを無我夢中で歌ったことだけは覚えている。

沢山の拍手が鳴り響く中、ある一人の女性が僕達に問いかけた。

「あなた達のCDはあるの?頂きたいんだけど。」

黙ることしか出来ない僕に代わって、DANは現状を一生懸命伝えてくれた。

実は自分達はグループでは無いということ。本当はTOMOYAという仲間がもう一人いるということ。僕がソロで活動しているということ。

それを聞いたその女性は

「頑張ってるのね、次はあなた達のオリジナル曲も聴かせてね。」

そう言って笑顔で僕のソロCDとKLEARのCDの両方を受け取ってくれた。

この女性をきっかけに沢山のCDが旅立ったこの日のことは、今でも忘れられない。

帰り道、充実感と感動と沢山の幸せな気持ちに包まれながら浮き足立つ僕。しかし本日のMVPであるハズのDANはというと何だか冴えない表情をしているのだ。

“一体どうしたんだろう”

問いかける僕に、この後DANは予想だにしなかった衝撃の事実を口にする。

to be continued…