「ピタジュマジック」カウントダウン企画“ピタジュが出来るまで”

ピタジュ結成秘話“ピタジュが出来るまで”

※このストーリーはピーターパンJr.の結成までに迫る連載企画です。2017年の現在進行形の話ではありません。登場する人物、ストーリーは全て過去のエピソードです。ピーターパンJr.のリーダーTAKUROを主人公としてお話を進めて参ります。

 

☆第十二話「告白」

自分自身に限界を感じ、初めて歌うことを辞めようと思った僕。

今思えば心のどこかで誰かに止めて欲しかったのかも知れないし、僕はまだ歌い続けて良いんだと認めて欲しかったのかも知れない。

そしてその相手に選んだのが、僕をここまで導いてくれたTOMOYAだった。

しかし、一通り現状を伝えた僕にTOMOYAが掛けてきたのは僕の全く予想をしない言葉だった。

「たくちゃんがそんな正直に打ち明けるなら、俺も話さなあかんやん。」

この台詞を聞いた瞬間、僕の頭は一瞬にして正気を取り戻した。

TOMOYAがこの数ヶ月間、一体どんな思いで治療をして来たのか。SNSを通してどんな思いで僕たちの活動を見守ってくれていたのか。確かにTOMOYAも含めた三人の為に僕たちは頑張っているつもりでいたが、TOMOYAからすれば自分だけ置いていかれているんではないか、という恐怖心もあったに違いない。

TOMOYAに対してなんて失礼なことをしてしまったんだろう。後悔の念が一気に押し寄せ、瞬く間に僕の心を満たした。

話をさえぎり謝罪を繰り返す僕をTOMOYAは笑って許してくれた。

「俺の方こそ、俺が誘ったにも関わらず何の力にもなれんくていつも申し訳なく思ってる。本当にごめん。」

とんでもないと焦る僕に対してTOMOYAはしっかりとした口調で話し始めた。

「実は俺、治りかけてた症状が最近また悪化して、今がこれまでで一番最悪の状態やねん。」

TOMOYAのひと言に言葉を失う僕。時期は十二月、僕たちの約束の日はもう目前まで迫っていた頃だった。新年を迎えれば、きっとまた三人で活動が出来る。何かあるごとに僕とDANはよくその話をして盛り上がっていた。

TOMOYAは続けた。

「夏にも一度こういう事になって、二人に迷惑を掛けた。でも今回はその時とは比べものにならないほど酷い症状が表れて。正直先が見えないし、音楽活動を再開出来るかどうかの前に普通に日常生活を送れるのかも危うい状況やねん。俺もこの数ヶ月で症状について何冊も本を読んだから知識だけは沢山身についてる。早くて二年。人によってはもっと早く治る人もおるかも知れんし、数年掛かる場合も珍しくない。」

声を震わせながら自分の運命を話すTOMOYAに、僕は声を掛けられないままだった。

「たくちゃんにお願いがある…。」

ようやく聞き取れるかどうかの声の大きさで、TOMOYAは僕にそう言った。

「これからは二人で歌って欲しい。」

あまりの予想外の台詞に、僕は心臓が止まるほど驚いた。確かに最近はクリタ君としてDANと一緒にパフォーマンスをしていた僕だったが、あくまでDANはTOMOYAの相方。という認識だったし、TOMOYAとDANのハーモニーが僕は本当に好きだった。DANがどう考えていたかは知らないが、その当時の僕にこのままDANとユニットを組む。という考えは全く無かったのだ。

「無理やって!!DANの相方はTOMOYAやないと!!」

ようやく声を出した僕にTOMOYAは涙を押し殺しながら話し続けた

「DANは俺が何て言っても俺のことを待つって言うと思う。何年掛かっても復活出来る可能性があるなら自分のことは気にせず治療に専念しろ、ってそういう奴なのは俺が一番よく知ってる。やけどアイツも俺ももう二十五歳。普通なら結婚して子どもが生まれとってもおかしくない年齢や。そんな男にとって一番大事な時期を俺のせいで台無しにしたくない。」

KLEARのお互いを思う気持ちを改めて目の当たりにした僕は、目頭が熱くなった。

そういえばDANは、気分が良い日によくこう言っていた。「TOMOYAにもこの景色を見せてやりたい。」と。その台詞を口にする時、DANは遠くを見つめ本当に優しい表情をしていた。こんなに固い絆で結ばれた二人の関係を僕が簡単に引き継げるはずはない。TOMOYAの気持ちも分かるが、何度考えてもどうしてもそう思ってしまった。

「何も協力出来てない俺やけど、路上ライブで全く人が止まらなかった時のことは覚えてる。あの状況から今のクリタ君の状況にくるまで、二人がどれほど努力したかも分かるし、そんな二人の歌声を聴きに来てくれる人がいるっていうのは本当に凄いことやと思う。DANには俺と違って沢山の才能があると思うし、こんなところで立ち止まって欲しくない。逃げるみたいで卑怯なんは分かってるけど、俺はDANをこれ以上待たせたままでおるんは耐えられへん。たくちゃん、頼む。」

お互いに涙で溢れまともに会話にならなかったが、僕はTOMOYAに一度考えてみると何とかそれだけを伝え、電話を切った。

さっきまでの自分の浅はかさ、そして僕に勇気を出して思いを告げてくれたTOMOYAのことを考えると涙が止まらなかった。

この日は僕たちにとって一生忘れられない一日になった。

そして時は流れ、TOMOYAからの最後の頼みをDANに打ち明けるタイミングが見つからないまま、僕たちは年末のライブイベントの日を迎えることになった。

駆けつけてくれた人たちへのプレゼントとして「LoveStory」のデモテープを作り、手作業でラッピングをした。

個人でも二人でもそれぞれにスタジオに入り、入念にライブリハーサルも積んだ。

“出来るだけのことはやった、後は楽しむだけ”

全ての行動には結果が付きまとうという事をこれまでの活動を通して理解していた僕たちの心は意外にも落ち着いていた。

このライブを終えた後、自分たちをどんな結果が待っていたとしても、それはきっと次の歩みへの道しるべになる。そう信じていたからだ。

路上ライブという非日常的なシチュエーションで僕たちに出会ってくれたお客様たち。その日たまたま自分の好きな歌を歌っていた僕たちが居た。落ち込んでいた時に気分転換に少し歌を聴こうと立ち止まった。出会い方は様々でも音楽というきっかけが無ければ僕たちは全員、ただすれ違うだけの運命だっただろう。そう考えるとこの場所で同じ時間を共有出来ているのは、まさに奇跡だと言っても過言ではない。感謝を精一杯伝えよう。そして喜びを分かち合おう。僕たちを出会わせてくれたこの“音楽”で。

無我夢中で歌い続けた二時間半。それはまさに夢のような時間だった。

宛ても無く東京に上京してきて、ゼロから二人で築き上げた場所。思い返せばきりが無いほどの経験を、このライブを決めてからすることが出来た。会場全員が本当に楽しめたのかは定かでは無い。中には期待はずれだった、という人も居ただろう。でも僕たちに後悔は無い。ライブを終えた自分の心が、そう教えてくれていた。

そしてその日の帰り道、駅のホームで「次に会うのは来年やな。」というDANに、思い切ってTOMOYAからの思いを打ち明けることにした。

DANがどんな顔をするのかは想像していた。きっと僕からの思いもよらない告白に“とんでもなく困った顔”をするに決まってる。誰に対しても優しいDANがそれ以外の顔をするとは、逆に言えば想像することが出来なかった。

僕もTOMOYAからの電話を終えてから今日まで、ずっとずっと考えてきた。僕にTOMOYAの代わりは務まるはずが無いし、もうTOMOYAが居ない時点でそれはKLEARではない。それどころか僕は、自ら一度音楽を辞めることを決めた人間だ。自分の意思とは裏腹に音楽への道を諦めなければならなくなったTOMOYAとは、いわば真逆の立場なのだ。そんな僕がDANとグループを組むなんてことは、やっぱりまだ想像が付いていなかった。

ただ、もし。

もしも少しでも、DANにその気があるのなら。二人で話し合って、またゼロから始めても良いかもしれない。TOMOYAの分も二人で音楽を続ける。そんな大それたことをいうつもりは無いが、僕を助けてくれたTOMOYAとDANに何か恩返しをしたい。という気持ちと、自分自身のまだ諦めきれない気持ちとが重なってほんの少しだけそんな風に思っていた。

僕からの突然の告白に岩のように固まるDAN。さっきまでのやりきった達成感に満ち溢れた笑顔は消え去り、僕の思った通りの“とんでもなく困った表情”を浮かべていた。

“答えは出たな”

僕が「無かったことにしよう」と言いかけたその時、

「ちょっと考えさせて欲しい」

とDANは口を開いた。

予想外の返答にあっけにとられる僕を尻目にDANはこう続けた。

「それTOMOYAが言ってたん?本気で?俺一回地元でTOMOYAと直接会って来るわ。」

何かを勘違いをしていそうなDANに、僕がTOMOYAに音楽を辞めようと思ったことを相談したこと。Keisukeの上京の話が無くなったこと。TOMOYAがDANのことを思う余り自分の容態のことを告げられずにいたこと。その全てを話した。

「事情はよく分かった。とりあえず一度話してみる。」

終電間近まで話し合いを重ねた僕たちは“今年も一年お疲れ”と互いに言い合った後、それぞれ家路に着いた。

それからというものぱったり連絡を取らなくなった僕たち。約束の日を終えたクリタ君に次なる計画はまだ無い。あくまで期間限定の臨時ユニットだったことを少し寂しく感じながら地元で正月を過ごす僕に一本の電話が入った。

相手はDAN。“TOMOYAとの話し合いは上手くいったのだろうか。ベストは二人でKLEARを続けることだが。もしかするとDANも神戸に帰ってしまうのか。”電話に出る数コールのうちに僕は、自分でも驚くほど沢山のことを考えていた。

「明けましておめでとう。久しぶり、」

なるべく平静を装って電話に出る僕とは反対に、DANは意外にも少し興奮気味だった。

「たくちゃん。俺決めたわ。一緒にやろう。」

開口一番に力強くそう伝えてくれるDAN。心のどこかでその台詞を期待していた僕は、まるで初恋が実ったような、そんな例えようのない幸福感に一気に包まれた。

「良いアイデアがあるねん。」

いつになく自信に満ち溢れた様子のDAN。

そしてここからついに、ピーターパンJr.集結への物語が幕を開けることになる。

 

to be continued…