「ピタジュマジック」カウントダウン企画“ピタジュが出来るまで”

ピタジュ結成秘話“ピタジュが出来るまで”

※このストーリーはピーターパンJr.の結成までに迫る連載企画です。2017年の現在進行形の話ではありません。登場する人物、ストーリーは全て過去のエピソードです。ピーターパンJr.のリーダーTAKUROを主人公としてお話を進めて参ります。

 

☆第十話「晴れのち雨」

東京という大都会に生まれた小さな願い「LoveStory」。

カバー曲だとしても、誠心誠意まごころを込めて歌うことで、見ず知らずの僕たちにも人は耳を傾けてくれるということは分かった。

歌というものは、その人の“人となり”が表れる。

その瞬間だけ上手く取り繕おうとしても、その浅はかさすら全てが浮き彫りになってしまうのだ。

言うなれば路上ライブとは、普段の自分を全く知らない他人に自分自身をジャッジしてもらうようなモノ。

小手先の演技など全く通用しない。人と人との勝負なのだ。

路上ライブを重ねるうちに少しずつそのことが分かってきたからこそ、僕たちの歌にも足を止めてくれる人たちが増えてきたのではないだろうか。

しかし“誰かの思いを代弁している”カバー曲だけで、人の気持ちを完全に動かしきれるはずはない。勿論、鋭い感性を持っている人ならば、少ない情報で“人となり”を見抜くことが出来たりもするだろうが、そんな人に出会えるのは本当に稀なケースだろう。

だが少なからず足を止めてくれる人がいる。ということは

“この人たち、ちょっと良いかも”

くらいには思ってもらえているという事だ。

その後はまさに自分の器次第。

自分にとって音楽とは何なのか。音楽で何がしたいのか。どれほど音楽のことを愛しているのか。

自分自身を理解し、正直な心で相手に対面することが出来た時初めて、人は自分の話を聞いてくれるのだ。

今伝えたいことは、全て「LoveStory」に詰め込んだ。

心を開き、自信を持って話をしよう。

高鳴る予感を抑えつつ、その日の路上ライブはスタートした。

場所は池袋。僕たちが初めて誰かに歌を聴いてもらったあの場所だ。

今日の僕たちには「LoveStory」がある。いつものようにカバー曲で人を集めよう。そして沢山の人にオリジナル曲を聴いてもらおう。

いつになく集中してカバー曲を披露する僕たち。

しかし何故だか、この日は少し様子が違っていた。

何曲カバー曲を披露しても、お客さんはいっこうに足を止めようとはしてくれない。それどころか夕暮れと共に通りを歩く人の数も減ってくる始末。

“こんなハズじゃない…”

徐々に焦りを感じはじめた僕の頭に、偶然テレビで聞いたベテラン俳優のトークが浮かんできた。

「泣かせようと演技をすると、不思議と観客は泣かなくなるものだ。」

そう、この日の僕たちは「LoveStory」を届けたいと強く思うあまり、一番重要な“音楽を楽しむ”ということを忘れてしまっていたのである。

少し休憩をとった僕たちは次のステージは何も考えず、二人で思いっきり音楽を楽しむことを決めた。

これは誰かに命令されてやっている任務でも何でも無い。

僕たちが僕たちらしくあるために始めたことなのだ。

そういえば、僕が歌を好きになったきっかけは“歌っている間は、心を全ての雑念から開放出来る”からだった。雑念だらけの歌で聴いてくれる人が楽しめるハズは無い。

“大切なこと”を思い出した僕たちは伸び伸びと自由にパフォーマンスをした。これまでで一番素直に、そして正直に。

DANとのハーモニー、息の合った掛け合い、曲と曲との間のトーク。

次第にいつもの感覚を取り戻していく僕たち。

丁度ひと回しを終えた頃だっただろうか、僕たちの周りには数人のお客様が足を止めてくれていた。

「今しかない。」

顔を見合わせ頷きあった後、僕たちは生まれてはじめての「LoveStory」を歌唱した。

よく知られているカバー曲を披露するわけでは無い。ようやく立ち止まってくれた数人の人さえ立ち去ってしまうかもという恐怖が、オリジナル曲の歌唱にはあるのだ。

僕たちは自分たちを信じて歌うしかなかった。

例え歌い終えた時、一人の観客も居なくなってしまっていたとしても構わない。今は全力で「LoveStory」を奏でよう。

初めての歌唱に戸惑う部分はありながらも、今出来る精一杯の力を振り絞って「LoveStory」の世界観を語りかけた。

自分が心を開けば、きっと聴いてくれる人も心を開いてくれるはず。そう願いを込めて。

アウトローが終わり、最後まで聴いてくれた人たちへ一礼をする僕たち。

初披露ということもあって決して“綺麗な歌”では無かったかもしれない。伝えたい思いが届いたかも分からない。でも今出来ることは精一杯やった。それだけは確かだった。

結局その日は、CDもチケットもお届けすることは出来なかったが自分たちの中で“行動するということ”の意味が少し分かったような気がした。

“行動をする”ということは“現状の崩壊”ということで、ミスや失敗を恐れて行動を起こさなければ、もしかしたら現状は維持できるのかも知れない。しかし現状を守ったままでは成長することは出来ないし、その先の未来はない。よく“失敗は成功のもと”という言葉を耳にするが、成功するためには沢山行動をして沢山失敗をし、その経験から成功法を導け。ということなのだろう。

自分たちのしていることは間違っていない。

その時そう思えたのも、きっとこれまでの沢山の行動があったからだろう。

それから僕たちは、来る日も来る日も「LoveStory」を歌い続けた。

歌が成長する。という話をご存知だろうか?習熟度といったりもするが、同じ歌を繰り返し歌うことでその歌に慣れてクオリティが上がっていく。ということなのだが、僕たちにもまさにソレが当てはまった。

始めは荒削りだった「LoveStory」も歌唱を重ねるごとに本来あるべきメロディーとして表現出来るようになり、そうなることで感情の起伏や曲に込められたメッセージなどをより的確に発信出来るようになっていった。

それを繰り返し、僕たちはようやく完成当初に思い描いた「LoveStory」を表現出来るようになったのだ。

そしてここからが凄かった。

僕たちの予想を上回る楽曲に成長した「LoveStory」が、沢山の奇跡を連れてくるようになったのである。

この曲の音源は無いですか?と問い合わせをしてくれる人。初めて聴く「LoveStory」に涙を流してくれる人。たった一度聴いただけでライブチケットを迷わず購入してくれる人。しまいにはラジオ番組のエンディングに使わせて貰えないか?というお話まで頂いた。

少しの戸惑いは勿論感じたが、今は自分たちを前へと引っ張ってくれる「LoveStory」にしっかり食らい付いていこうと必死で歌い続けた。

そうして月日は流れ、ライブのチケットの目標枚数まで後わずかというところに迫ったある日。突然Keisukeから連絡が入った。

僕たちの現状や、これからのこと。丁度Keisukeに話したいことが溜まっている時だったので“今後の未来への期待感”を持ちながら僕は電話に出た。

いつになくテンションが高めの僕に対し、少し思いつめたようなトーンで話すKeisuke。全ては順調に進んでいるというのに一体どうしたのだろう?

僕の問いかけに

「TAKUROに謝らなあかんことがあるねん…」

Keisukeは小さく話し始めた。

スゴロクでいうところの“振り出しに戻る”

ここから僕は暗く長い長いトンネルを歩き始めることになる。

 

to be continued…